退職金を2回受け取ると税金はどうなる?

退職金1,800万円+企業型DC800万円のシンプルシミュレーション

退職時に受け取るお金には、

  • 会社から支給される 退職金

  • 企業型DC(確定拠出年金)を 一時金で受け取るお金

があります。

どちらも税法上は 「退職所得」 として扱われますが、受け取るタイミングによって税金が大きく変わる点には注意が必要です。ここでは、条件をできるだけ単純にしたモデルケースで、「4年以内に受け取る場合」と「5年以上空ける場合」を比較します。

シミュレーションの前提条件

まずは、前提条件です。

モデル人物

  • 60歳でA社を定年退職

  • 勤続年数:38年

  • 同じ会社で企業型DCにも加入

受け取る金額

  • 退職金(一時金):1,800万円

  • 企業型DC(一時金):800万円

勤続年数の考え方

  • 退職金:勤続38年

  • 企業型DC:勤続38年で計算
    (60歳定年以降は「運用指図者期間」とする)

まずは退職所得控除額を確認する

退職所得控除は、勤続年数に応じて次のように計算されます。

勤続38年の場合の退職所得控除

800万円 + 70万円 ×(38年 − 20年) = 800万円 + 1,260万円 = 2,060万円

👉 退職所得控除:2,060万円

この金額までは、退職所得に税金がかかりません。

ケース①:退職金の3年後に企業型DCを一時金で受け取る(4年以内)

① 60歳:退職金1,800万円を受け取る

  • 退職金:1,800万円

  • 退職所得控除:2,060万円

1,800万円 − 2,060万円 = マイナス

👉退職金はすべて退職所得控除の範囲内
税金はかかりません

② 63歳:企業型DCを一時金で受け取る

  • DC一時金:800万円

  • 前回の退職所得の受給から 4年以内

ここが重要なポイントです。

4年以内の場合のルール

  • 退職所得控除は「新しく計算し直されない」

  • 退職金とDCを通算して考える

③ 使える退職所得控除の残りを確認

  • 退職所得控除の総枠:2,060万円

  • 退職金で使った金額:1,800万円

2,060万円 − 1,800万円 = 260万円

👉企業型DCで使える退職所得控除は260万円だけです。

④ 企業型DCの課税計算

800万円 − 260万円 = 540万円

退職所得は 2分の1課税なので、

540万円 ÷ 2 = 270万円

👉270万円が課税所得になります。

ケース①のまとめ(4年以内)

内容 金額
退職金の課税所得 0円
DC一時金の課税所得 270万円
税金の負担感 やや重い

ケース②:退職金の6年後に企業型DCを一時金で受け取る(5年以上)

次に、受け取る時期をずらした場合です。

① 60歳:退職金1,800万円(同じ条件)

  • 退職金:1,800万円

  • 課税なし

② 66歳:企業型DCを一時金で受け取る(5年以上経過)

5年以上空けた場合の考え方

  • 前回の退職とは「別の退職」として扱う

  • 退職所得控除を改めて計算できる

③ 企業型DCの退職所得控除(勤続38年)

  • 退職所得控除:2,060万円

④ 企業型DCの課税計算

800万円 − 2,060万円 = マイナス

👉企業型DCも全額が退職所得控除の範囲内
税金はかかりません

ケース②のまとめ(5年以上)

内容 金額
退職金の課税所得 0円
DC一時金の課税所得 0円
税金の負担感 非常に軽い

2つのケースを比べると違いは明確

項目 4年以内 5年以上
DC一時金の課税 あり なし
課税所得 270万円 0円
税負担

👉
同じ金額を受け取っても、タイミング次第で税金が変わります。

なぜこの差が生まれるのか

理由はとてもシンプルです。

  • 退職所得控除は短期間に何度も満額使えない

  • 4年以内は同じ退職の延長扱い

  • 5年以上空けると別の退職として再計算できる

このルールを知らないと、

「DCは非課税だと思っていた」
「こんなに税金がかかるとは思わなかった」

という結果になりがちです。