確定拠出年金の自動移換問題
ポータビリティ
確定拠出年金制度の特長の1つは、退職や転職の際に自分の積み立てた年金資産(確定拠出年金等)を自由に持ち運ぶことが出来ることです。これを「ポータビリティ(携帯性)がある」といいます。
従来の確定給付年金や厚生年金基金の場合、ある程度の勤続年数がないと満額支給されなかった為、転職を何度も繰り返すと、その都度少額(またはゼロ)の退職金となり、結果として従業員にとって不利益を招いていました。また、年金資産全体での管理運用を行っていた為、ポータビリティがほとんど機能していませんでした。
それに対して、企業型年金は、少なくとも3年以上勤務した会社の従業員であれば、退職や転職するまでに積み立てた年金資産は自分自身のものとなります。なぜなら積立開始段階から個人別の口座で管理されており、自分の年金資産が明確になっているからです。
今までのような終身雇用に縛られない勤務形態の変化により、転職が一般化してきた雇用環境には、ポータビリティの確保は時代に即したものだと思います。
特にここ数年において、法律改正により現役世代の全ての人が、企業型若しくは個人型の確定拠出年金に加入することが出来るようになりました。その為、さまざまな課題も浮き上がっています。その一つが離転職時に発生する自動移換問題です。
自動移換問題
企業型確定拠出年金は、離転職時に自分自身の年金資産を個人型年金(iDeCo)や転職先の会社の年金制度への移換が可能になっています。しかし、何もせず放置していると資格喪失の翌月から起算して6ヶ月経過後には国民年金基金連合会に自動移換(強制移換)されます。平成30年末時点では、この自動移換者は累計で約73万人に達しています。個人型年金加入者の約85万人と比較してもその多さが分かると思います。
自動移換されると、
- 資産が全て現金化される。(つまり運用されない)
- 移換時に移管手数料が4269円徴収される。
- 移換月の4ヶ月後から毎月51円の管理手数料が徴収される。
- 老齢給付金の受給年齢になっても受給されない。(70歳に自動給付となる)
- 自動移換中の期間は、確定拠出年金の加入期間にみなされない為、受給開始時期が遅くなる。
- 自動移管後の資産処理手続き(個人型年金に移換。企業型年金に移換。脱退一時金を受け取る。)を行った場合もそれぞれ手数料が徴収される。
など無駄な費用を支払うことになります。金額の大小はあれ、自分の財産であることには間違いありません。離転職される場合は、出来るだけ早く移換手続きはお取りください。
まとめ
このような自動移換が多い原因としては、会社側の従業員に対する教育不足が上げられますが、いきなり投資経験の無い従業員に資産運用を任せる難しさに由来しているといえます。いざ個人型年金(iDeCo)への移換となった場合、何をすればよいのかわからないので、そのまま放置してしまう。他に、個人型年金(iDeCo)の場合、証券会社に支払う管理手数料は自己負担となるため、自動移換のままの方が資産が残せる。などと誤った理解をしているケースもあるようです。リスク分散や長期運用など投資に対する経験や知識向上が、まだまだ不足していると感じました。