退職金の10年ルールとは?企業型DCとの関係をわかりやすく解説
退職金は税制上大きく優遇された所得であり、多くの場合はそれほど大きな税金がかかりません。
その理由は、退職金には 退職所得控除 や 2分の1課税 といった特別な税制があるためです。
しかし、退職金の税制を考えるときに注意が必要なのが、退職所得控除の通算ルールです。
特に近年よく話題になるのが
「10年ルール」
と呼ばれる考え方です。
このルールは、企業型確定拠出年金(DC)やiDeCoの普及によって、会社員にとって非常に重要なテーマになっています。
例えば次のようなケースです。
- 60歳で企業型DCを一時金で受け取る
- 65歳で会社の退職金を受け取る
この場合、受取タイミングによっては 退職所得控除が通算される可能性があります。
この記事では、退職金税制の中でも重要な 10年ルールの仕組みと注意点 を、ファイナンシャルプランナーの視点でわかりやすく解説します。
目次
退職金には退職所得控除がある
まず前提として、退職金には 退職所得控除 という大きな非課税枠があります。
退職所得控除は、勤続年数によって次のように計算されます。
勤続20年以下
40万円 × 勤続年数
(最低80万円)
勤続20年超
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例えば勤続35年の場合は次のようになります。
800万円
+
70万円 × 15年
= 1,850万円
つまり、退職金が1,850万円以下であれば、原則として所得税・住民税はかかりません。
このように退職金には大きな控除があるため、税負担は軽くなる仕組みになっています。
退職所得の計算方法
退職金の税金は、次の手順で計算します。
①退職金から退職所得控除を差し引く
②残った金額の2分の1を課税所得とする
③所得税・住民税を計算
この 2分の1課税 によって、税負担はさらに軽くなります。
退職所得控除は何度でも使えるわけではない
ここで重要なのが、退職所得控除は
退職金を受け取るたびに自由に使えるわけではない
という点です。
もし退職所得控除を何度でも使えるとすると、
退職金
企業型DC
iDeCo
企業年金
などを何回にも分けて受け取ることで、控除を何度も使えてしまいます。
そのため税法では、同じ勤務期間に対応する控除を重複して使えないようにする仕組みが設けられています。
これが
- 5年ルール
- 10年ルール
- 20年ルール
などと呼ばれる考え方です。
退職金の10年ルールとは
10年ルールとは、簡単に言えば
先に企業型DCなどの一時金を受け取り、その後10年以内に退職金を受け取る場合、退職所得控除が通算される可能性がある
という考え方です。
特に次のようなケースで問題になります。
ケース
60歳
企業型DCを一時金で受給
65歳
会社を退職し退職金を受給
この場合、DC一時金を先に受け取っているため、退職所得控除の計算に影響する可能性があります。
なぜ10年という期間なのか
企業型DCやiDeCoは、会社の退職金とは異なり
勤務期間に対応した老後資金
という性格を持っています。
そのため税法では、
退職金
DC一時金
が短期間に受け取られる場合、同じ勤務期間に対応する退職所得控除が重複しないようにする仕組みを設けています。
その調整期間の目安が
10年
とされています。
具体例で考えてみる
次のようなケースを考えてみます。
ケース
企業型DC一時金
600万円
退職金
2,000万円
勤続年数
35年
退職所得控除は
1,850万円
です。
もしDCと退職金を同時に受け取ると
600万円
+
2,000万円
= 2,600万円
ここから控除を差し引きます。
2,600万円 − 1,850万円
= 750万円
その2分の1
375万円
が課税所得になります。
受取タイミングで税額が変わる可能性
一方で、
DC
↓
10年以上後
↓
退職金
という順序で受け取る場合は、退職所得控除の扱いが変わる可能性があります。
つまり、
受け取りタイミングによって税額が変わる可能性がある
ということです。
このため、退職金とDCをどの順序で受け取るかは、老後資金の計画において重要なポイントになります。
実際には個別判断が必要
ただし重要な点として、
10年以内であれば必ず控除が通算されるわけではありません。
例えば
- 勤務期間が重複しない
- 退職所得控除がすでに十分残っている
- 制度上別の退職として扱われる
といった場合には、結果として税額に影響が出ないケースもあります。
つまり10年ルールは
「必ず税金が増えるルール」
というより
退職所得控除の重複利用を防ぐ仕組み
と理解する方が正確です。
企業型DCが普及している理由
近年、この10年ルールが注目される理由は
企業型DCの普及
にあります。
現在、多くの企業が
- 退職金制度
- 企業型DC
を組み合わせた制度を導入しています。
そのため会社員の多くは
退職金+DC
の両方を受け取ることになります。
その結果、
退職所得控除の使い方
が重要なテーマになっているのです。
退職金の受け取りは設計が重要
退職金の税金は、単純に金額だけで決まるわけではありません。
重要なのは
- 受取金額
- 勤続年数
- 受け取り回数
- 受け取りタイミング
です。
特に
退職金
企業型DC
iDeCo
などを組み合わせて受け取る場合は、受給タイミングの設計によって税額が変わることがあります。
まとめ
退職金の10年ルールのポイントを整理すると次の通りです。
- 退職金には退職所得控除という大きな非課税枠がある
- 企業型DCやiDeCoの一時金も退職所得になることがある
- DCを先に受け取り、その後10年以内に退職金を受け取ると控除が通算される可能性がある
- ただし必ず税額が増えるわけではない
退職金は人生の中でも最大級の資金になることが多く、税制の理解は非常に重要です。
特に企業型DCやiDeCoを利用している場合は、退職金と年金制度の受け取りタイミングを含めた全体設計を考えることが大切になります。

