退職金とDCは同時受取と分割受取どちらが得?税額比較で解説

会社員の老後資金として、退職金と並んで重要なのが 企業型確定拠出年金(DC) です。
最近では、多くの企業が退職金制度と企業型DCを併用しています。

そのため退職時には

  • 会社の退職金
  • 企業型DCの一時金

の両方を受け取るケースが増えています。

ここで多くの人が悩むのが

「同時に受け取るべきか、それとも時期を分けるべきか」

という問題です。

結論から言うと、
受け取りタイミングによって税金が大きく変わる可能性があります。

この記事では、退職金とDCの受け取り方について、税額の仕組みと具体例を交えて分かりやすく解説します。


退職金とDCは税制上「退職所得」

まず重要なのは、退職金とDCの一時金はどちらも 退職所得 として扱われる点です。

退職所得とは、会社を退職したときなどに受け取る所得のことで、税制上は特別な優遇が設けられています。

退職所得の税額は次の手順で計算します。

①退職金の総額を確認
②退職所得控除を差し引く
③残った金額の2分の1を課税所得とする
④所得税・住民税を計算

この 退職所得控除2分の1課税 によって、退職金の税金は給与所得より大幅に軽くなります。


退職所得控除の仕組み

退職所得控除は、勤続年数によって次のように計算されます。

勤続20年以下

40万円 × 勤続年数
(最低80万円)

勤続20年超

800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

例えば勤続35年の場合

800万円

70万円 × 15年

1,850万円

つまり、退職所得控除は 1,850万円 になります。


同時受取の場合の税額

では、退職金とDCを同時に受け取った場合を考えてみましょう。

ケース

勤続年数
35年

退職金
2,000万円

DC一時金
600万円

合計

2,600万円

まず退職所得控除を差し引きます。

2,600万円 − 1,850万円

750万円

次に2分の1課税を適用します。

750万円 ÷ 2

375万円

この375万円が課税所得になります。

所得税・住民税を合わせると、税額はおおよそ

約70万〜90万円程度

になる可能性があります。


分割受取の場合の税額

次に、退職金とDCを分けて受け取るケースを考えてみます。

ケース

退職金
2,000万円

DC
600万円

まず退職金だけ受け取る場合

退職所得控除
1,850万円

2,000万円 − 1,850万円

=150万円

150万円 ÷ 2

75万円

この場合の税額は

10万円程度

になります。

次にDCを別のタイミングで受け取ると、控除の扱いが変わる可能性があります。

条件によっては

税額がほとんどかからない

ケースもあります。


なぜ税額差が生まれるのか

同時受取と分割受取で税額が変わる理由は

退職所得控除の使い方

にあります。

退職所得控除は、同じ勤務期間に対して何度も使えるわけではありません。

そのため

退職金

DC

を同時に受け取ると、控除は 1回分しか使えない ことになります。

一方、受け取り時期を分けることで、控除の扱いが変わる可能性があります。


受け取りタイミングのルール

退職所得控除には、いくつかの調整ルールがあります。

代表的なものが次のルールです。

  • 5年ルール
  • 10年ルール

これらのルールは

退職所得控除の重複利用を防ぐための制度

です。

例えば

DC

10年以内

退職金

という順序で受け取ると、控除が通算される可能性があります。


すべてのケースで分割が得とは限らない

ただし重要なのは、

必ず分割受取が得とは限らない

という点です。

例えば次のような場合です。

  • 退職金が控除以内に収まる
  • DCの金額が小さい
  • 勤続年数が長い

このようなケースでは、同時受取でも税金はほとんどかからないことがあります。

また、受け取りタイミングによっては、控除の通算ルールが適用される可能性もあります。

そのため、単純に

「分ければ必ず得」

というわけではありません。


企業型DCが普及したことで重要になった問題

この問題が注目されるようになった背景には、企業型DCの普及があります。

現在、多くの企業では

  • 退職金制度
  • 企業型DC

を組み合わせた制度を採用しています。

そのため会社員の多くが

退職金

DC

を受け取ることになります。

つまり、退職金とDCの受け取り方は

多くの会社員に関係する税金問題

なのです。


FP視点のアドバイス

退職金とDCの受け取り方を考える際には、次のポイントが重要になります。

①退職所得控除の金額
②退職金とDCの合計額
③受け取りタイミング
④勤務期間の重複

特に重要なのは

受給タイミングの設計

です。

退職金やDCは、受け取った後に変更することができません。
そのため、退職前に税制を理解しておくことが大切です。


まとめ

退職金とDCの受け取り方のポイントを整理すると次の通りです。

  • 退職金とDCの一時金はどちらも退職所得になる
  • 退職所得控除と2分の1課税によって税負担は軽い
  • 同時受取では控除は1回しか使えない
  • 分割受取で税額が下がるケースがある
  • ただし必ず得になるとは限らない

退職金は人生最大級の資金になることが多く、税制の理解は非常に重要です。
特に企業型DCやiDeCoを利用している場合は、受け取りタイミングを含めた資金設計を考えることが大切になります。