第12回 現在の金融資産を入力しよう|キャッシュフロー計算のスタート地点を決める
前回は、公的年金や企業年金など、老後に入ってくる収入をキャッシュフロー表へ入力しました。
今回は、現在保有している金融資産を入力します。
「金融資産なら、今持っている預金やNISAを入力すればいいんでしょ?」
と思うかもしれません。
基本的にはその考え方で大丈夫です。
ただし、キャッシュフロー表では、現在の金融資産がその後の資産残高を計算するスタート地点になります。
ここを大きく間違えると、将来の金融資産残高もずれてしまいます。
まずは現在保有している金融資産を整理して、キャッシュフロー表へ入力していきましょう。
なぜ現在の金融資産を入力するの?
これまでの講座では、給与や年金などの「収入」と、生活費や住宅ローン、教育費などの「支出」を入力してきました。
しかし、
収入-支出=年間収支
だけでは、老後のお金が足りるかどうかは分かりません。
例えば、ある年の収入が400万円、支出が450万円なら、
400万円-450万円=▲50万円
となり、その年の家計は50万円の赤字です。
それでも、現在2,000万円の金融資産を持っていれば、すぐに生活できなくなるわけではありません。
金融資産から50万円を取り崩せば、その年の支出をまかなえるからです。
反対に、年間収支が黒字でも、老後までに十分な金融資産を準備できるとは限りません。
そこでキャッシュフロー表では、
現在の金融資産+毎年の収支
をつなげて、将来の金融資産残高を計算していきます。
そのために必要になるのが、今回入力する「現在の金融資産」です。
今回も具体的な家族を例に考えてみよう
ここでは、これまでと同じ家族を例にして考えてみます。
2026年時点で、春夫さん50歳、夏子さん45歳、秋菜さん15歳、冬樹さん13歳の4人家族とします。
春夫さん一家では、キャッシュフロー計算を始める時点の金融資産として2,000万円を保有している設定にしています。
この2,000万円をスタート地点として、その後の収入や支出を反映しながら金融資産残高を計算していきます。

まず現在の金融資産を整理してみよう
自分のキャッシュフロー表を作る場合は、まず現在保有している金融資産を確認します。
例えば、次のようなものです。
| 金融資産 | 現在の残高 |
|---|---|
| 普通預金 | 500万円 |
| 定期預金 | 300万円 |
| 株式 | 200万円 |
| 投資信託・NISA | 700万円 |
| その他の金融資産 | 300万円 |
| 合計 | 2,000万円 |
これはあくまで例ですが、このように金融機関ごとではなく、資産の種類ごとに整理してみると分かりやすくなります。
銀行口座や証券口座が複数ある場合は、それぞれの残高を確認して合計しましょう。
大切なのは、
「自分が今、いくらの金融資産を持っているのか」
を把握することです。
預貯金だけでなくNISAや投資信託なども確認しよう
「貯蓄はいくらありますか?」
と聞かれると、普通預金や定期預金だけを考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、老後資金として使える資産を考える場合は、株式や投資信託なども含めて確認します。
例えば、
普通預金
定期預金
株式
投資信託
NISA口座で保有している金融商品
などです。
NISAはそれ自体が金融商品ではなく、投資による利益を非課税にするための制度です。
そのため、
「NISA 500万円」
というより、
「NISA口座で保有している投資信託などの現在の評価額500万円」
という考え方になります。

株式や投資信託はいくらで入力する?
株式や投資信託を持っている場合、
「購入したときの金額を入力するの?」
「現在の評価額を入力するの?」
と迷うかもしれません。
キャッシュフロー表のスタート地点として使うのであれば、基本的には現在の評価額で考えます。
例えば100万円で購入した投資信託が、現在120万円になっているなら、現在の資産価値は120万円です。
反対に100万円で購入したものが80万円になっていれば、現在の評価額は80万円です。
今回知りたいのは、
「過去にいくら投資したか」ではなく、「現在いくらの金融資産を持っているか」
だからです。
証券会社のサイトやアプリなどで、現在の評価額を確認してみましょう。
ただし、株式や投資信託の価格は日々変動します。
キャッシュフロー表を作った日の評価額を基準にしておけば十分です。
住宅や車は金融資産に入れる?
持ち家の場合、
「自宅も資産だから金融資産に入れるの?」
と思うかもしれません。
今回作成しているキャッシュフロー表では、基本的に自宅や自家用車は金融資産残高には含めません。
住宅には資産価値がありますが、預金のようにそのまま生活費として使えるわけではないからです。
例えば、
自宅3,000万円
預金500万円
を持っている人がいたとしても、
「金融資産3,500万円ある」
とは考えません。
老後の生活費が不足したとき、自宅の一部を50万円分だけ取り崩して生活費にすることはできないからです。
もちろん、自宅を売却する、住み替えるといったライフプランを考える場合には住宅資産も重要になります。
しかし、今回の金融資産残高では、
預貯金や株式・投資信託など、家計で利用できる金融資産
を中心に入力します。
住宅ローン残高は金融資産から引かない
もう一つ迷いやすいのが住宅ローンです。
例えば、
金融資産2,000万円
住宅ローン残高1,000万円
なら、
2,000万円-1,000万円=1,000万円
として入力した方がよいようにも見えます。
しかし、今回作っているキャッシュフロー表では、住宅ローンは第8回で毎年の返済額として支出に入力しています。
そのため、現在の金融資産から住宅ローン残高を差し引いて入力する必要はありません。
金融資産は金融資産。
住宅ローンは住宅ローン。
それぞれ別に管理します。
そうすることで、
「金融資産はいくら残っているのか」
「住宅ローン返済はいつまで続くのか」
を別々に確認できるようになります。
DC・iDeCoはどう考える?
ここは少し注意が必要です。
企業型DCやiDeCoにも資産残高があります。
そのため、
「現在の金融資産に入れた方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、第10回では、将来DC・iDeCoから受け取る予定のお金を受取年の収入として入力しました。
例えば春夫さんの場合、70歳でDC・iDeCoから300万円を受け取る設定です。
ここで現在の金融資産にも同じ300万円を含め、そのうえ70歳の収入にも300万円を加えると、同じ資産を二重に計上してしまう可能性があります。
今回のキャッシュフロー表では、将来受け取るDC・iDeCoを収入欄に計上する設計にしているため、現在の金融資産残高との整合を取る必要があります。
大切なのは、
同じ資産を現在の金融資産と将来の収入の両方に重複して入れないこと
です。
これは退職金や企業年金などについても同じです。
生命保険の解約返戻金はどうする?
生命保険に加入している方は、
「解約返戻金も金融資産に入れるの?」
という疑問もあると思います。
これは、その保険をキャッシュフロー表の中でどう扱うかによって変わります。
老後資金として解約して使うことを予定しているなら、その時期の収入として反映する方法があります。
一方、死亡保障などを目的として保有し続ける保険なら、現在の金融資産に単純に加えてしまうと、実際に生活費として使える資産より多く見える可能性があります。
そのため、今回の段階では無理にすべてを金融資産へ入れる必要はありません。
まずは、
預貯金・株式・投資信託など、現在の残高を明確に確認できる金融資産
から整理すると分かりやすいでしょう。
「いつ時点の残高か」をそろえよう
金融資産を入力するときに、もう一つ重要なのが基準日です。
例えば、
普通預金は12月31日の残高
投資信託は今日の評価額
定期預金は半年前の残高
というようにバラバラの時点の数字を集めると、正確なスタート金額が分かりにくくなります。
できるだけ、
「○年○月末現在」
など、同じ時点にそろえて確認しましょう。
今回のサンプルでは、2026年からキャッシュフローを作成するため、その直前の金融資産残高をスタート地点として設定しています。

金融資産残高はどのように変化する?
現在の金融資産を入力すると、その後は毎年の収支によって残高が変わっていきます。
基本的なイメージは、
前年の金融資産残高+その年の収入-その年の支出
です。
例えば、
前年末金融資産 2,000万円
年間収入 700万円
年間支出 600万円
なら、
2,000万円+700万円-600万円
=2,100万円
となります。
逆に、
年間収入 400万円
年間支出 500万円
なら、
2,000万円+400万円-500万円
=1,900万円
です。
このように、年間収支が赤字になると金融資産を取り崩し、黒字なら金融資産が増えていきます。
実際には、このあと第13回で設定する運用利回りも金融資産残高の計算に関係してきます。
そのため、今の段階では金融資産残高の増減を詳しく分析する必要はありません。
金融資産2,000万円なら老後は安心?
春夫さん一家の金融資産として2,000万円を入力すると、
「2,000万円もあるなら老後は大丈夫では?」
と思うかもしれません。
逆に、自分の金融資産が500万円なら、
「これでは足りないのでは?」
と不安になる方もいるでしょう。
しかし、現在の金融資産額だけで老後資金が足りるかどうかは判断できません。
今後、
給与はいくら入るのか
退職金はいくら受け取るのか
年金はいくら受け取るのか
生活費はいくらかかるのか
教育費はいくら必要なのか
住宅ローンはいつまで続くのか
によって、将来の金融資産残高は大きく変わります。
2,000万円あっても早く減ってしまう家計もあれば、それほど多くなくても長期間維持できる家計もあります。
だからこそ、キャッシュフロー表を作ります。
「今いくら持っているか」だけではなく、「そのお金が将来どのように増減していくのか」を見る
ことが重要です。
ただし、それを確認するのは第14回以降の「分析編」です。
今はまだ現在の金融資産を入力するだけにしておきましょう。
今回の入力内容を確認しよう
今回入力するのは、キャッシュフロー計算を始める直前の金融資産残高です。
春夫さん一家の場合は、
金融資産残高 2,000万円
をスタート地点とします。
自分のキャッシュフロー表を作る場合には、預貯金だけでなく、株式や投資信託、NISAで保有している金融商品なども確認してみましょう。
その際のポイントは、
現在の評価額で確認すること
基準となる時点をそろえること
住宅などは金融資産に含めないこと
DC・iDeCoなどを二重計上しないこと
です。
これで、将来の金融資産残高を計算するためのスタート地点が決まりました。
次回は「運用利回り」を入力しよう
次回は、入力編の最後となる、
「第13回 運用利回りを入力しよう」
です。
現在2,000万円の金融資産を持っていたとしても、そのすべてを普通預金に置いている場合と、株式や投資信託などで運用している場合では、将来の金融資産残高が変わる可能性があります。
そこで次回は、
キャッシュフロー表では運用利回りをどのように設定すればよいのか
を考えていきます。
ただし、
「株式を何%持つべき」
「もっと投資した方がよい」
という資産運用の改善を行う回ではありません。
現在の資産運用状況をもとに、将来の金融資産を計算するための利回りを設定します。
第13回まで入力が終われば、いよいよ基本となるキャッシュフロー表が完成します。
その後、第14回からは完成した表を使って、
「このライフプランで将来のお金はどうなるのか」
を分析していきましょう。
■自分で作るキャッシュフロー表 作成講座一覧
- 第1回 キャッシュフロー表とは?なぜ50代に必要なのか
- 第2回 キャッシュフロー表を作る前に準備するもの
- 第3回 ライフプランを見える化する仕組みを知ろう
- 第4回 キャッシュフロー表の家族構成を入力しよう
- 第5回 ライフイベントを書き出そう
- 第6回 キャッシュフロー表の収入を入力しよう
- 第7回 キャッシュフロー表の支出を入力しよう
- 第8回 住宅ローンを入力しよう
- 第9回 教育費を入力しよう
- 第10回 退職金を入力しよう
- 第11回 年金・老後の収入を入力しよう
- 第12回 現在の金融資産を入力しよう
- 第13回 運用利回りを設定しよう(近日公開)
- 第14回 完成したキャッシュフロー表を見てみよう(近日公開)
- 第15回 年間収支の見方|赤字になる年を確認しよう(近日公開)
- 第16回 金融資産残高の見方|老後資金は何歳まで持つ?(近日公開)
- 第17回 キャッシュフロー表を改善してみよう(近日公開)
- 第18回 住宅ローンを見直すとキャッシュフローはどう変わる?(近日公開)
- 第19回 家計の固定費を見直すとキャッシュフローはどう変わる?(近日公開)
- 第20回 退職金・老後資金の使い方を見直そう(近日公開)

