第9回 キャッシュフロー表の教育費を入力しよう
前回は、住宅ローンの年間返済額をキャッシュフロー表へ入力しました。
今回は、お子さんがいる家庭にとって大きな支出となる「教育費」を入力していきます。
教育費というと、
「大学卒業までに全部でいくら必要なのか」
という総額が気になるところですが、キャッシュフロー表ではもう一つ大切なことがあります。
それが、
「いつ、いくら必要になるのか」
を確認することです。
特に子どもが2人以上いる家庭では、進学時期が重なることで、ある年だけ教育費が大きく増えることがあります。
今回は具体的な家族を仮に設定して、一緒に教育費を入力してみましょう。
今回はこの家族を例に考えてみよう
ここでは、2026年現在、次のような4人家族という設定にしましょう。
・夫 50歳
・妻 45歳
・長女 15歳、中学3年生
・長男 13歳、中学1年生
夫婦には2人の子どもがいて、これから高校・大学への進学を控えている家庭です。

進路については、次のような設定としましょう。
長女
・2027年に公立高校へ進学
・2030年に私立理系大学へ進学
・大学は自宅から通学
長男
・公立高校へ進学
・2032年に私立文系大学へ進学
・大学進学後は一人暮らし
・学費とは別に、親から月8万円を仕送り
このように、まず「誰が、いつ、どのような進路を選ぶのか」を整理してから教育費を考えると分かりやすくなります。
教育費は進学先によって大きく変わる
同じ大学進学でも、
・国公立か私立か
・文系か理系か
・自宅通学か一人暮らしか
によって必要な金額は大きく変わります。
今回の例では、教育費を次のように設定してみましょう。
・公立中学校 年間54万円
・公立高校 年間60万円
・私立理系大学 年間160万円
・私立理系大学の入学金等 30万円
・私立文系大学 年間120万円
・私立文系大学の入学金等 25万円
・長男への仕送り 年間96万円(月8万円)
実際にご自身のキャッシュフロー表を作る場合は、現在通っている学校の実際の支出額や、志望校の入学金・授業料などを確認して入力してください。
まだ進路が決まっていない場合は、現時点で考えられる進路を一つ設定すれば大丈夫です。
キャッシュフロー表は、進路が決まった後に何度でも修正できます。
教育費には何を含める?
教育費というと授業料だけを考えがちですが、実際にはそれ以外の費用も発生します。
例えば、
・入学金
・授業料
・学校関係費
・教材費
・通学費
・塾や予備校代
などです。
さらに、大学進学で自宅を離れる場合は、
・家賃
・生活費
・仕送り
・引っ越し費用
なども考える必要があります。
キャッシュフロー表では、細かい項目を1円単位まで分ける必要はありません。
その年に家計から教育関連としていくら出ていくのか
を年間金額として整理すれば十分です。
年ごとの教育費を計算してみよう
それでは、先ほど設定した家族の教育費を年ごとに整理してみます。
| 西暦 | 子どもの状況 | 年間教育費 |
|---|---|---|
| 2026年 | 長女・中3、長男・中学生 | 108万円 |
| 2027年 | 長女・高校、長男・中学生 | 114万円 |
| 2028年 | 長女・高校、長男・中学生 | 114万円 |
| 2029年 | 長女・高校、長男・高校 | 120万円 |
| 2030年 | 長女・私立理系大学1年、長男・高校 | 250万円 |
| 2031年 | 長女・私立理系大学、長男・高校 | 220万円 |
| 2032年 | 長女・私立理系大学、長男・私立文系大学1年+仕送り | 401万円 |
| 2033年 | 長女・私立理系大学、長男・大学+仕送り | 376万円 |
| 2034年 | 長男・大学+仕送り | 216万円 |
| 2035年 | 長男・大学+仕送り | 216万円 |
| 2036年以降 | 2人とも就職 | 0円 |
こうして並べてみると、教育費が毎年同じではないことがよく分かります。
教育費は「総額」ではなく「各年」に入力する
ここがキャッシュフロー表を作るうえで大切なポイントです。
例えば、
「大学卒業までに教育費が1,000万円かかる」
と分かっても、1,000万円を一度に支払うわけではありません。
実際には、
2026年 108万円
2027年 114万円
2028年 114万円
というように、年ごとに支出していきます。
そのためキャッシュフロー表にも、教育費の総額ではなく、
それぞれの年に支払う金額
を入力します。

前回の住宅ローンでも、残りの総返済額ではなく「年間返済額」を入力しました。
教育費も同じ考え方です。
2032年に教育費のピークが来る
今回の例で注目したいのが2032年です。
この年は、
長女 私立理系大学在学中
長男 私立文系大学1年目
となります。
さらに長男は一人暮らしを始めるため、年間96万円の仕送りも発生します。
その結果、年間教育費は、
401万円
となります。
2026年の108万円と比較すると、年間で約300万円も教育費が増えることになります。
教育費について「全部でいくら必要か」だけを見ていると、このようなピークはなかなか分かりません。
キャッシュフロー表に年ごとに入力することで、
「家計負担が最も大きくなる年」
を確認できるようになります。
教育費がピークのとき、親は何歳?
ここでもう一度、家族の年齢を見てみましょう。
2032年には、夫は56歳になります。
つまり、
50代後半に教育費のピークを迎える
ということです。
さらに住宅ローンを返済している家庭であれば、この時期には、
住宅ローン
+
教育費
という大きな支出が同時に発生します。
仮に住宅ローンの年間返済額が100万円なら、
教育費 401万円
住宅ローン 100万円
となり、この2項目だけで年間501万円になります。

ここまで見ると、
「この家計は大丈夫なのだろうか」
と感じるかもしれません。
しかし、今回もまだ判断はしません。
今は「教育費を減らすべきか」を考えない
教育費が401万円になると、
「私立大学は難しいのでは?」
「一人暮らしをやめた方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、まだキャッシュフロー表は完成していません。
家計には教育費以外にも、
・夫婦の給与収入
・預貯金
・退職金
・企業型DC
・年金
などがあります。
教育費だけを見て、家計が安全かどうかを判断することはできません。
この講座では、まず
「今考えているライフプランを実行したら、将来のお金はどうなるのか」
を確認します。
そのため、今の段階では進学プランを変更せず、そのまま教育費を入力しておきます。
改善策を考えるのは、キャッシュフロー表が完成してからです。
子どもが2人以上いる家庭は「重なる年」を確認しよう
今回の例では、長女と長男の年齢差は2歳です。
そのため、2人が大学へ進学する期間が重なります。
例えば、
1人目の教育費 200万円
2人目の教育費 200万円
なら、それぞれ単独では負担できそうに見えても、同じ年に重なれば年間400万円になります。
教育費を考えるときは、
「1人につきいくらか」だけでなく、「兄弟姉妹の教育費が何年重なるか」
も確認してみましょう。
これはキャッシュフロー表を作ることで、とても分かりやすくなります。
教育費が終わる時期も重要
今回の例では、2035年まで長男の大学教育費と仕送りが続きます。
そして2036年以降は、2人とも就職する設定としましょう。
すると、
2035年 教育費216万円
2036年 教育費0円
となります。
つまり、年間200万円以上の支出が一気になくなります。
これも家計にとって大きな変化です。
教育費が終わった後のお金を、
・老後資金の準備
・住宅ローン返済
・資産運用
などへ回すことも考えられます。
ただし、それをどう使うか決めるのも後です。
今回は、
「教育費がいつ終わるか」
を確認しておくだけで大丈夫です。
ご自身の家庭でも同じように整理してみよう
ここまでの例を参考にして、ご自身のお子さんについても整理してみてください。
確認したいのは、
・現在の年齢
・高校へ進学する年
・大学へ進学する年
・公立か私立か
・文系か理系か
・自宅通学か一人暮らしか
・仕送りが必要か
です。
そして、それぞれの進路について年間で必要になる教育費を調べます。
最後に、
「各年に家計から支出する教育費」
をキャッシュフロー表へ入力します。
最初から完璧である必要はありません。
まずは現在考えている進路を一つ設定し、将来のお金の流れを作ってみましょう。
今回確認しておきたいポイント
教育費を入力したら、次の点を確認してみてください。
・各年の教育費はいくらか
・大学進学などで金額が増える年はいつか
・兄弟姉妹の教育費が重なる年はいつか
・教育費のピークはいくらか
・そのとき自分は何歳か
・教育費が終了するのは何年か
そして、今回キャッシュフロー表へ入力する中心となる数字は、
「各年に家計から支出する教育費」
です。
今回の例では、2032年の401万円が教育費のピークになりました。
皆さんの家庭では何年がピークになるでしょうか。
実際にキャッシュフロー表へ入力して確認してみましょう。
次回は退職金を入力します
次回は、
「第10回 キャッシュフロー表の退職金を入力しよう」
です。
ここまで、
住宅ローンという大きな支出、
教育費という大きな支出
を入力してきました。
次は、定年前後に大きな収入となる「退職金」を入力していきます。
住宅ローン、教育費、退職金が同じ時間軸に並んでくると、
「50代から定年、そして老後まで家計がどのように変化していくのか」
がさらに見えやすくなってきます。

