第11回 年金・老後の収入を入力しよう|キャッシュフロー表で定年後のお金を見える化
前回は、退職金など定年前後に受け取る大きなお金をキャッシュフロー表へ入力しました。
今回は、年金・老後の収入を入力していきます。
50代からキャッシュフロー表を作る場合、老後の収入はとても重要です。
現役時代は毎月給与が入ってきますが、定年が近づくと、
「再雇用になったら収入はいくらになるのか」
「年金はいくらもらえるのか」
「企業年金や個人年金はいつから受け取るのか」
と、収入の種類や金額が変わっていきます。
そこで今回は、
「何歳から、年間いくら入ってくるのか」
を整理して、キャッシュフロー表に入力していきましょう。
ただし、今回もまだ「年金だけで生活できるのか」「老後資金が足りるのか」という分析はしません。
第13回までは入力編です。
まずは現在予定している老後の収入を、そのままキャッシュフロー表に反映していきます。
老後の収入は公的年金だけではない
「老後の収入」と聞くと、最初に思い浮かぶのは公的年金ではないでしょうか。
しかし、キャッシュフロー表では、公的年金だけを入力すればよいわけではありません。
50代から老後にかけては、給与収入から年金収入へ一度に切り替わるとは限らないからです。
例えば、
現役時代の給与
↓
定年後の再雇用による給与
↓
企業年金・個人年金
↓
公的年金
というように、複数の収入が重なる期間があります。
さらに、夫婦では年齢が違うため、夫の年金が始まってから数年後に妻の年金が始まるケースもあります。
そこでキャッシュフロー表では、それぞれの収入を別々に整理していきます。
今回も具体的な家族を例に考えてみよう
ここでは、これまでと同じ家族を例にして考えてみましょう。
2026年時点で、
| 家族 | 年齢 |
|---|---|
| 春夫さん | 50歳 |
| 夏子さん | 45歳 |
| 秋菜さん | 15歳 |
| 冬樹さん | 13歳 |
という家族とします。
春夫さんは60歳で定年を迎え、その後も再雇用で働きます。
サンプルのキャッシュフロー表では、春夫さんの給与収入は59歳まで年間640万円、60歳から64歳までは年間450万円です。
夏子さんは年間120万円の給与収入を60歳まで見込んでいます。
ここへ今回、企業年金、個人年金、公的年金などを加えていきます。
まず定年後の給与収入を確認しよう
最初に確認したいのが、定年後も働く場合の給与収入です。
春夫さんの場合、60歳で定年を迎えますが、すぐに仕事を辞める設定ではありません。
60歳から64歳まで再雇用で働きます。
現役時代の年間給与収入は640万円ですが、再雇用後は年間450万円としています。
したがって、
59歳まで 年間640万円
↓
60~64歳 年間450万円
↓
65歳以降 給与収入なし
という流れになります。

ここで重要なのは、60歳になったからといって、いきなり収入を0円にしないことです。
実際に再雇用などで働く予定なら、その期間の収入もキャッシュフロー表に反映します。
自分のキャッシュフロー表を作る場合は、勤務先の再雇用制度や定年後の働き方を確認し、現在想定している手取り収入を入力してみましょう。
公的年金の見込額を確認しよう
次は、老後の収入の中心となる公的年金です。
自分の年金見込額を確認するときに役立つのが、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」です。
ここでは年金制度そのものを詳しく説明するのではなく、
「何歳から、年間いくら受け取る予定なのか」
を確認できれば十分です。
キャッシュフロー表では収入・支出ともに手取り額(可処分所得)を基本としているため、年金についても、実際に家計へ入ってくる金額に近づけて入力すると、より実態に近いシミュレーションになります。
まだ税金や社会保険料まで正確に計算できない場合は、現在把握できている見込額を使い、後で修正しても構いません。
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- ねんきんネットで年金見込額を確認する方法
春夫さんの公的年金を入力してみよう
それでは、春夫さんの公的年金を入力してみます。
今回のサンプルでは、65歳から公的年金を受け取る設定です。
春夫さんは2026年に50歳なので、65歳になるのは2041年です。
サンプルでは、2041年から2045年まで、春夫さんの公的年金を年間270万円としています。
したがって、
| 年 | 春夫さんの年齢 | 公的年金 |
|---|---|---|
| 2040年 | 64歳 | 0万円 |
| 2041年 | 65歳 | 270万円 |
| 2042年 | 66歳 | 270万円 |
| 2043年 | 67歳 | 270万円 |
| 2044年 | 68歳 | 270万円 |
| 2045年 | 69歳 | 270万円 |
と入力します。

一時金として受け取る退職金とは違い、公的年金は毎年受け取る収入です。
そのため、受給開始年だけではなく、その後の各年にも年間受取額を入力するのがポイントです。
夫婦の年齢差にも注意しよう
年金を入力するときに忘れやすいのが、夫婦の年齢差です。
今回の設定では、春夫さん50歳に対して夏子さんは45歳です。
5歳の年齢差があります。
そのため、春夫さんが65歳になって公的年金を受け取り始めても、夏子さんはまだ60歳です。
夏子さんが65歳になるのは2046年です。
サンプルでは、2046年から夏子さんの公的年金として年間75万円を入力しています。
つまり、
2041年 春夫さんの公的年金開始
↓
2046年 夏子さんの公的年金開始
と、5年間のずれがあります。
キャッシュフロー表では夫婦の年金を最初から合算してしまうより、それぞれの受給開始年に合わせて入力した方がお金の流れを正確に把握できます。
春夫さんの年金が270万円から230万円になるのはなぜ?
サンプルを見ると、もう一つ気になるところがあります。
春夫さんの公的年金は、65歳からずっと270万円ではありません。
夏子さんが65歳になる2046年からは、
270万円 → 230万円
に減っています。
これは今回のサンプルでは、春夫さんの年金に加給年金を含めているためです。
加給年金は、厚生年金の加入期間など一定の要件を満たす人に、年下の配偶者などがいる場合に加算される年金です。
そして、配偶者が65歳になると原則として加給年金の対象から外れるため、春夫さんの年金額も変わる想定にしています。
そのためサンプルでは、
| 期間 | 春夫さん | 夏子さん | 夫婦合計 |
|---|---|---|---|
| 2041~2045年 | 270万円 | 0万円 | 270万円 |
| 2046年以降 | 230万円 | 75万円 | 305万円 |
となります。
「妻の年金が始まったのに、なぜ夫の年金が減っているの?」
と疑問に感じやすい部分なので、キャッシュフロー表を作るときにも注意したいところです。
ただし、加給年金の支給要件などを今回詳しく説明する必要はありません。
自分が対象になるかどうかについては、年金事務所や日本年金機構の情報などで確認しましょう。
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企業年金も忘れずに入力しよう
老後の収入は公的年金だけではありません。
勤務先によっては企業年金を受け取れる場合があります。
今回のサンプルでは、60歳で企業年金として1,500万円を受け取った後、61歳以降は年間50万円の企業年金収入が続く設定になっています。
キャッシュフロー表では、
一時金は受け取る年にまとめて入力
年金は毎年の受取額を入力
と考えると分かりやすくなります。
例えば年間50万円なら、61歳、62歳、63歳……と、それぞれの年に50万円を入力します。
個人年金がある場合も入力しよう
民間の個人年金保険などを契約している場合も、老後の収入として入力します。
今回のサンプルでは、春夫さんが61歳から70歳まで、年間48万円の個人年金を受け取る設定です。
したがって、
61歳 48万円
62歳 48万円
63歳 48万円
……
70歳 48万円
という形で入力します。
個人年金の場合は契約内容によって受取開始年や受取期間が異なります。
保険会社から送られてくる契約内容のお知らせや保険証券などを確認して、
何歳から・何年間・年間いくら受け取るのか
を確認してみましょう。
老後の収入を一つの時間軸に並べてみよう
ここまでの春夫さんの収入を整理すると、定年前後で収入の種類が次々と変わっていくことが分かります。
| 年齢 | 主な収入 |
|---|---|
| ~59歳 | 給与640万円+夏子さん給与120万円 |
| 60歳 | 再雇用給与450万円+退職時の大きな収入 |
| 61~64歳 | 再雇用給与450万円+企業年金50万円+個人年金48万円 |
| 65歳~ | 公的年金+企業年金+個人年金 |
| 70歳 | 上記に加えてDC・iDeCo300万円 |
| 71歳~ | 公的年金+企業年金など |
サンプルの収入欄では、給与・賞与、企業年金、個人年金、公的年金、DC・iDeCoを別々の行に入力し、最後に「収入合計」が自動計算されるようになっています。
こうして横に並べると、
「定年したら給与がなくなり、年金だけになる」
という単純な変化ではないことが分かります。
給与が減り、企業年金や個人年金が始まり、その後公的年金が加わり、妻の年金も始まる。
キャッシュフロー表を作るメリットの一つは、こうした収入の切り替わりを年単位で見えるようにできることです。
金額は「年額」にそろえて入力しよう
キャッシュフロー表に年金を入力するときには、月額と年額を混同しないように注意しましょう。
例えば、年金の手取り見込額が月15万円なら、
15万円×12か月=180万円
として、キャッシュフロー表には「180」と入力します。
今回使用しているキャッシュフロー表は、金額の単位が「万円」で、収入・支出ともに年額で入力する形式です。
給与、年金、生活費などをすべて年額にそろえることで、年間収支を比較できるようになります。
年金額が正確に分からなくても入力してみよう
将来受け取る年金額を、今の段階で完全に正確に予測することはできません。
今後の働き方によっても変わりますし、制度改正や年金額の改定などもあります。
だからといって、
「正確な金額が分からないから入力できない」
と考える必要はありません。
現時点で確認できる年金見込額を使って、まずキャッシュフロー表を作ってみましょう。
キャッシュフロー表は一度作ったら終わりではありません。
50歳で作った表なら、55歳、60歳とライフプランが変わったときに、数字を修正していけばよいのです。
老後の収入を入力しても、まだ分析はしない
ここまで入力すると、定年後の収入がかなり見えてきます。
すると、
「65歳から収入がこんなに減って大丈夫なの?」
「年金より生活費の方が多そう」
「このままだと金融資産が減っていくのでは?」
と気になるかもしれません。
実際に、今回のサンプルでも現役時代と老後では収入額が大きく変わります。
しかし、ここではまだ判断しません。
現在は「入力編」です。
キャッシュフロー表が完成していない段階で、
生活費を減らす
もっと長く働く
住宅ローンを繰上返済する
年金の受取方法を変える
といった改善を始めてしまうと、「現在のライフプラン」と「改善後のライフプラン」が混ざってしまいます。
まずは現在予定している内容を入力して、キャッシュフロー表を完成させましょう。
完成した表を分析するのは、第14回以降です。
今回入力した老後の収入を確認しよう
今回のサンプルでは、給与収入に加えて、企業年金、個人年金、公的年金などを入力しました。
特に確認したいのは、
「何歳から」「年間いくら」「何年間受け取るのか」
の3点です。
公的年金だけでなく、
再雇用給与
企業年金
個人年金
その他の定期収入
がある場合も、同じように整理してみましょう。
そして夫婦の場合は、夫と妻を別々に確認します。
これで、現役時代の給与収入から老後の年金収入までが、一つのキャッシュフロー表につながりました。
次回は「現在の金融資産」を入力しよう
ここまでの講座で、
家族構成
ライフイベント
収入
支出
住宅ローン
教育費
退職金
年金・老後の収入
まで入力してきました。
キャッシュフロー表の完成まで、あと少しです。
次回は、
「第12回 現在の金融資産を入力しよう」
です。
普通預金、定期預金、株式、投資信託、NISAなど、現在保有している金融資産を整理します。
ここで入力する金融資産は、将来のお金の推移を計算するためのスタート地点になります。
ただし次回も、
「株を売った方がよい」
「NISAに移した方がよい」
といった投資判断はまだ行いません。
まずは、
「現在、自分はいくらの金融資産を持っているのか」
を確認して、キャッシュフロー表へ反映していきましょう。
■自分で作るキャッシュフロー表 作成講座一覧
- 第1回 キャッシュフロー表とは?なぜ50代に必要なのか
- 第2回 キャッシュフロー表を作る前に準備するもの
- 第3回 ライフプランを見える化する仕組みを知ろう
- 第4回 キャッシュフロー表の家族構成を入力しよう
- 第5回 ライフイベントを書き出そう
- 第6回 キャッシュフロー表の収入を入力しよう
- 第7回 キャッシュフロー表の支出を入力しよう
- 第8回 住宅ローンを入力しよう
- 第9回 教育費を入力しよう
- 第10回 退職金を入力しよう
- 第11回 年金・老後の収入を入力しよう
- 第12回 現在の金融資産を入力しよう
- 第13回 運用利回りを設定しよう(近日公開)
- 第14回 完成したキャッシュフロー表を見てみよう(近日公開)
- 第15回 年間収支の見方|赤字になる年を確認しよう(近日公開)
- 第16回 金融資産残高の見方|老後資金は何歳まで持つ?(近日公開)
- 第17回 キャッシュフロー表を改善してみよう(近日公開)
- 第18回 住宅ローンを見直すとキャッシュフローはどう変わる?(近日公開)
- 第19回 家計の固定費を見直すとキャッシュフローはどう変わる?(近日公開)
- 第20回 退職金・老後資金の使い方を見直そう(近日公開)

